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たくみにしかわ バターラスク

「ハルユタカ」から始まったパン用の国産小麦の歴史まとめ【パンを楽しむ基礎知識】

DATE
2019.4.29
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パン好きの皆さんにはおなじみになっている「国産小麦」を使ったパン。
実は、気軽に食べられるようになったのは、平成に入ってからのことだって知っていましたか?

今回は、パンに使われる国産小麦の歴史の中で、主流となっている北海道産小麦「ハルユタカ」「春よ恋」「ハルキラリ」「キタノカオリ」「ゆめちから」の歴史についてまとめてみました。

これを参考に、使っている国産小麦から好みのパンを探してみてるのもいいかもしれませんね。

昭和は日本のパン用小麦がまだない時代


このグラフは、今、主流で作られているパン向けの国産小麦の作付け面積の推移です。
昭和の時代。今から30年前の日本にも小麦は作られていましたが、うどんなどの麺に合う小麦で、パンに使うには不向きなものでした。

小麦粉の種類を、タンパク質の割合によって、強力粉、中力粉、薄力粉といった分類をしますが、パンにつかうための強力粉(タンパク質の量が多い小麦粉)に使える小麦は、日本では育たなかったんですね。

その中、1965年(昭和40年)育成の「ハルヒカリ」など、パン向けの小麦でありながら、倒れやすく大規模な生産には向かない品種などもあったようです。

日本の多湿な気候や土壌でも安定的に育てられるパン向けの小麦をつくるために、様々な品種改良が行われていましたが、品質や生産量といった面でまだ満足いくものには至っていませんでした。

国産小麦のレジェンド、幻の小麦「ハルユタカ」の登場


そんな厳しい状況でしたが、「国産小麦でパンをつくる」という声にあわせて、関係者の努力の結果、1985年(昭和60年)に開発されたのが「ハルユタカ」。品種登録されたのが1987年(昭和62年)ですので、昭和が平成に切り替わる直前の出来事でした。

「ハルユタカ」は、もともとパン用に作られたものではなく、「ハルヒカリ」の代替え品種として麺用に開発されたそうですが、開発の過程でパン作りに向いた品種であることがわかり、ここから国産小麦で作るパンの歴史がスタートします。

これまでの海外から輸入していた小麦とは違う、国産ならではの風味や食感を持つ「ハルユタカ」。「国産小麦でパンづくりを」という農家やパン作り手の方々の熱い想いもあり、日本ならではの新しいパンの可能性を提示する小麦となりました。

しかし、「ハルユタカ」はその生産の難しさ(今では生産方法の改善で解決されていますが)から、今では後継種である「春よ恋」に主役の座を譲っています。

流通量が少なく「幻の小麦」とまで呼ばれる「ハルユタカ」。その希少性だけでなく、パンの味という面でも「ハルユタカ」の持つ風味のファンは多く、今のパンブームの中、さらに人気が高まっています。

「国産小麦でパンを作りたい」という人たちの熱い想いで作られた、国産小麦で作るパンを方向付けたパンでもあります。

国産小麦を普及させたスター小麦「春よ恋」


「ハルユタカ」が切り開いた国産小麦で作るパンを切り開いたのが「春よ恋」「ハルユタカ」にアメリカのパン用品種「ストア」を交配させ、2000年(平成12年)に登場しました。

「春よ恋」の特徴は「ハルユタカ」の持つ生産面の課題が改善したこと。「ハルユタカ」に比べて病気に強く収穫量が多いので、生産者が取り組みやすいというメリットがあり、収穫量を大きく伸ばしました。

2017年(平成29年)のパン用品種の国内産小麦流通量 11.2万トンのうち、この「春よ恋」が35%にあたる3.9万トンを占め、現在のパン用国産小麦の主力として活躍しています。

生産量が多く、流通量が多いということは、その素材をつかって創意工夫する人の数が多いということでもあります。たくさんの人が作り、食べてもらうことで、国産小麦の魅力である「もちもちの柔らかい食感」の可能性を世の中に普及させることにも活躍しています。

「春よ恋」は、「ハルユタカ」が開拓した国産小麦をさらに普及させたスター小麦といえるのではないかと思います。

国産小麦界期待の新人「はるきらり」


「ハルユタカ」「春よ恋」はともに、春にまく「春まき小麦」。一般に「春まき小麦」は、「秋まき小麦」よりタンパク質の量が多く、パン作りに向いていると言われています。2009年(平成21年)ごろから増加し、この「春まき小麦」の後継者として期待されているのが「はるきらり」です。

味や香りは「春よ恋」以上との声もあり、また、北海道立総合研究機構によると、「はるきらり」のパンへの適正は「春よ恋」に近く、生産者にとっての作りやすさは「春よ恋」以上とのことですので、今後どのような活躍を見せてくれるか注目したいと思います。

不遇の天才、秋まき小麦の雄「キタノカオリ」


「ハルユタカ」「春よ恋」「はるきらり」に代表される「春まき小麦」に対し、秋にまく「秋まき小麦」を牽引してきたのが「キタノカオリ」です。

北海道品種「ホロシリコムギ」とハンガリー品種「GK-Szemes」を父母にもつ「キタノカオリ」は、「バターに似た甘い香りで、後味はご飯のよう(パンらぼ 池田氏)」で、「奇跡の小麦」とも呼ばれています。

給水性が高い、という性質から、生地に水を多く含ませてパンを作る多加水パンでも活躍し、たくさんの人気ベーカリーで使われています。

しかし、残念なニュースが。2005年(平成17年)ごろから作付け面積を増やしてきた「キタノカオリ」ですが、作付け面積の大幅減少と2018年産の天候不順による不作から、安定共有ができず、2018年に製粉会社各社で「キタノカオリ」100%の提供が終了するという事態になってしまいました(「キタノカオリ」と他の小麦とのブレンドは販売継続だそうです)。

どれだけ消費者に支持されていようと、小麦が生産されなければ私たちの口に入ることはありません。これからも「キタノカオリ」のパンを、楽しむために、私たちにできることはないんでしょうか。

超強力粉、規格外の秋まき小麦「ゆめちから」


一般に「春まき小麦」は、「秋まき小麦」よりタンパク質の量が多く、パン作りに向いているとされています。しかし「秋まき小麦」の中で、「春まき小麦」を凌ぐタンパク質の量を持つ規格外の大物が現れました。

それが「キタノカオリ」を父に持つ超強力小麦「ゆめちから」です。

小麦粉の種類を、タンパク質の割合によって、強力粉、中力粉、薄力粉といった分類をしますが、この「ゆめちから」はなんと強力粉を上回る超強力粉!

「ゆめちから」は、2008年ごろ、北海道農業研究センターが13年かけて開発した小麦が優良品種に認定され、品種登録されました。「秋まき小麦」は、湿度の高い日本の夏が来る前に収穫ができるので「春まき小麦」よりも栽培しやすいというメリットもあります。

「ゆめちから」自身はもちもちとして甘みのある食感が特徴ですが、一番の特徴は、超強力粉のため、他の小麦とブレンドがしやすいというところにあるんだとか。

これまでの日本の主力の小麦粉である中力粉と、超強力粉のゆめちからをブレンドすることで、パンが焼ける新しい小麦粉を作ることができる。しかもブレンドの配合で様々な工夫ができる。

「ゆめちから」は、国産小麦の新しい世界を見せてくれる、規格外の小麦なんです。

国産小麦のパンをストーリーを味わいながら食べる


「国産小麦でできたパン」は、昭和の時代から沢山の人達が取り組み、平成になってようやく花開いた文化でした。

もっちり感が楽しめる国産小麦のパンの味はもちろんですが、それらの小麦が生まれた背景もしりながら食べることで、いっそう味の重みが楽しめるのではないかと思います。

これを機会に好きな国産小麦を見つけてみてはいかがでしょうか?
そして、好きな小麦のパンを見つけたら、生産者の皆さんにはずっとそれを作ってもらえるように、我々パン好きも自分たちのやり方で応援していければと思います。

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