PANPAK(パンパク)はおいしいパンに出会える
Webマガジン

サブスクはベーカリーの切り札になるか。パンのサブスクリプション(サブスク)の意義を考えてみた【PANPAK編集部コラム】

InstagramでもPANPAKをどうぞ【PR】


PANPAKプロデューサーの秋山です。

2019年3月26日、兵庫・加古川のニシカワ食品さんの直営店「ニシカワパン 加古川駅店」で新しい取り組みが始まりました。
それに関連して、今日は長めのコラムを書いてみました。もしよければ、お時間のある時に読んでみてもらえると嬉しいです。

冒頭に書いたこの新しい取り組みとは、月額3,000円の定額を払えば、毎日1個、お店からパンが持ち帰れる「ニシカワパン PASSPORT」というサービスです。

月額3,000円で毎日パンをお持ち帰り!パンのサブスクがニシカワパン加古川駅店で4月よりスタート
https://panpak.jp/archives/18913

この定額の販売モデルは、サブスクリプション(略してサブスク)等と呼ばれていて、いろいろな業態で目にするようになりました。

これまで、パソコンソフトなどのデジタル販売(モノがいらないデータ販売)で多く使われていたものでしたが、最近になって、洋服、クルマ、コンタクトレンズ、美容院、ランチ… などいろいろな業態で新しい販売形態として取り入れられるようになっています。

そこで、ベーカリーを運営する方々にとって、どんな風に活用できる可能性があるのか、ということをまとめてみました。

パンのサブスクリプション(略してサブスク)

月額定額で、毎日1個、お店からパンが持ち帰れるこのサービス。
お店で売っている全てのパンが対象というわけではなくて、食パン(ボンジュール食パン:280円、あん食パン:200円)、バゲット(パリジェンヌ:230円)の3種類が対象になっています。

「朝食など、食事で食べるパンは当店に取りに来てね」
「惣菜パンやおやつのパンはお店で買ってね」

という立て付けになっていることがわかります。

サブスクリプション(略してサブスク)をどうやって始めている?

今回の「ニシカワパン 加古川駅店」の場合は、2つの方法を使って、実現しています。

一つは、スタンプカード
「ニシカワパン PASSPORT」というカードを作って、毎日、当日分のパンを受け取りに来た時にカードにスタンプを押します。ユーザーは、カードを財布に入れておいて、お店のレジでパンを引き取るときに、カードを提示します。手軽に始められますが、毎月カードを販売することになるので、ユーザーの継続率はあまり高くないかもしれません。

もう一つは、Webチケット
「FANCLOVE」というサブスクが簡単に作れるWebサービスを使って、スマホで画面を提示するだけでパンを引き取れるようにしています。Webチケットには、1日1回しかつかえないようにする仕組みも用意されているので、「何度もお店に来て商品を持って帰る」といったこともありません。デジタルリテラシーの高いユーザーに限定されてしまう課題がありますが、支払いにクレジットカードやキャリア決済が使えるので、毎月自動で更新されるためユーザーの継続率が高いと思われることが最大の特徴です。

ニシカワパン加古川駅店(兵庫・加古川) | FANCLOVE(ファンクラブ)
https://fanclove.jp/club/nishikawa

ただ、兵庫・加古川という地域特性を考えても、スタンプカード中心に展開をし、徐々にWebチケットに移行してもらうという考え方がよさそうです。

そもそも、サブスクで採算は合うのか?

今回のサービスは、月額3,000円の定額。
対象商品は、平均単価 約240円ですので、1か月に12.5回くれば元が取れるようになっています。

もし、30日毎日使うと、客側は7,200円分のパンを3,000円の支払いで受け取ることができるので、4,200円分お得です。

また、2日に1回の利用であれば、240円×15= 3,600円と600円分お得です。

この金額は、ベーカリーの運営者にとってはどうなんでしょうか!?
最も使われた場合で考えると、ユーザーは4,200円分の得なのですが、店舗にとってはそのまま4,200円分の損にはつながりません

仮に、原価率30%とすると、7,200円分のパンの原価は2,400円なので、原価率だけで見ると、600円の利益が残ります

その他に様々なコストがかかりますが、非現実な数字ではなさそうです。

実際は、30日毎日利用するユーザーは(ほぼ)いないと考えられるので、月間の利用回数がどれくらいになるかで、残る利益が変わってきます。

サブスクガチ勢の存在には注意

ただ、最近の他のサービスの例では、予想もつかない使われ方をされるケースも出てきていますので、注意が必要です。
昼と夜の食事を提供するサービス月60回の利用チャンスがあるサービスを56回使ったツワモノもいるらしいので、この辺りのバランスに一定のリスクがあるのも確かです。

サービスの運営者さんがブログを残しているので、興味のある方はご覧ください。

【完全敗北】 POTLUCKの「先着100名限定1万2千円食べ放題プラン」を突然終了した話そして #POTLUCKガチ勢 とは?
https://note.mu/rym/n/n7cbe38c6aa3b

こちらのPOTLUCKさんは、提携飲食店からお金をもらう手数料モデルで、ベーカリーが自前でやる場合とは少し異なります。

手数料モデルの場合は、利益幅が少ないため不測の事態を吸収できることが難しい、という構造上の課題も重なってのことでした。

とはいえ、月間の利用回数がどのあたりになるかを推測しながら、バランスをとっていく必要があるので、パンの店頭販売でサブスクがどうなっていくかについてはまだ未知数。ニシカワパンの場合は今回を試験展開という扱いにし、利用頻度を見ながら金額や対象の商品を調整していくものと思われます。

「ついで買い」がどのくらい発生するか?

「少なくとも、赤字にはならなさそう」というのが見えてくるこのサービス、売上拡大の追い風と期待されるのが、ついで買い

対象商品を受け取りに来てくれたお客様が、ついでに他の商品を買って帰ってくれることが期待できます。

このサービスでは、食パンとバゲットのいわゆる食事パンが対象なので、ドーナツやコロネが食べたい場合は、お金を出して払う必要があります。ですので、サブスクを集客ツールとして、ついで買いで利益を見込んでいくという方法も考えられそうです。

サブスク導入で廃棄パン削減の可能性も

ベーカリーの運営で悩ましいものとして、パンの廃棄があります。
閉店まで一定のパンの品ぞろえを維持しないと、全体の売上にも影響する、と考えるベーカリーも多いかと思います。

例えば、パンの廃棄を減らす工夫として、「サブスクの対象のパンにこの日動きが悪いパンを追加する」ということで、廃棄数の圧縮ができる可能性があります。

また、サブスク会員に対して、売れ残りそうなパンをサービスしたり、店舗割引で販売するという形をとることもできそうです。

サブスクを導入するということは、店舗運営が会員ビジネスになります。新しい会員を増やし、既存会員の離脱を減らす、という考え方をもって店舗を運営することになります。

「廃棄につながりそうなパンを、既存会員の満足度向上につなげてしまおう」という考え方も、会員の満足度向上につながり、解約率(サブスクの世界では、「チャーンレート」と呼んだりします)を下げる施策として役立つと思われます。

サブスクはサービス業

ベーカリーがサブスクを導入をするには、事業に対する考え方を大きく変えていく必要があると思います。
それは、製造小売業からサービス業への転換

「商品が何個売れたか」というこれまでの考え方から、特にこの3つの観点で考えることに変わっていきます。
・新しいお客様を増やす
・既存のお客様の利用金額を増やす
・既存のお客様の解約を減らす

ニシカワパンのプレスリリースには、こんなことが書かれていました。
―――――――――――
これまでのベーカリー事業は、商品である「パン」を焼き、売り場に並べて、お客様に選んでいただくという事業でした。
今後、サブスクリプション形式の販売方法が普及し、「ニシカワパン PASSPORT」を使っていただくお客様が増えると、単に商品を並べるのではなく、ご利用いただくお客様の期待に応えるパンづくりをいかに行うか、というサービス業としての意味合いが強くなると考えています。
―――――――――――

「商品を作り、売り場に商品を並べる」というモノ中心の発想をしていたのがこれまで。これからは、「月額定額課金という形でユーザーにお店をささえてもらいながら、そのユーザーが長期間満足するパン生活をいかに提供できるか」というヒト中心の発想に変わっていきます。

パンは日々食べる頻度の高いサービスですので、移り変わるユーザーの変化に対応したパンを提供し続け、なるべく長い間(できれば生涯)、会員でいてもらう。という考え方に変わってくるのではないでしょうか。

その時に重要になるのが、これまでのベーカリーで培ってきた、毎日沢山の種類のパンを安定的に焼き上げられる、という技術だと思っています。

それは、スーパーやコンビニなどの量販店にはなかなか真似できない価値です。
そういった意味で、ユーザー中心のサービスになった時、今のベーカリーを営んでいる方々の技術力がさらに見直されていくのではないかと期待してしまいます。

PANPAKからのお知らせ
≫PANPAK読者限定「たくみにしかわ」 バターラスク」送料込み1,000円お試しプラン≪
≫パン事業者の皆様の情報発信を支援する「パンの広報室」始めました≪
≫Instagramでは、コンビニパン図鑑、アレンジパン図鑑連載中≪
≫Twitterでも日々パン情報発信中≪
         

この記事が気に入ったら
いいねをしよう!

人気記事